問1 次は,予算についての記述であるが,妥当でないものはどれか。
予算について参議院が衆議院と異なった議決をした場合においては,必ず両院協議会を開かなければならないが,両院協議会を開いても意見が一致しないときは,衆議院の議決が国会の議決となる。
予算を作成してこれを国会に提出する権限は,法律案の場合と異なり,各議院にはなく,内閣のみに認められている。
法律案の予見し難い予算の不足に充てるため,予備費を設けることができるが,予備費の支出については,国会の承諾を得る必要はない。議決をすること
公金その他の公の財産は,公の支配に属していない慈善,教育若しくは博愛の事業に対してこれを支出し,又はその利用に供してはならないとされている。
各会計年度は相互に独立であるのを原則とし,各会計年度における経費は,その年度における歳入をもって支出しなければならないのであるが,この例外が継続費である。
問2 警察官職務執行法第7条は,警察官が一定の場合に武器を使用することができ,さらに正当防衛等に該当するときは,武器によって人に危害を与えることもできることを規定しているが,誤っているのはどれか。
警察官は,警察法第67条によって,その職務遂行のため小型武器を所持することが認められているが,同法においては,いかなる場合にその武器を使用することができるかについての規定はない。
武器を使用することは,一般的には実力の行使の一態様であるといえるが,武器が人を殺傷する危険なものであるだけに,これを使用することができる場合を法律で明確にすることが必要である。
この規定の対象となる「武器」とは,人の殺傷の用に供する目的で作られ,現実に人を殺傷する能力を有するものを意味する。けん銃,ライフル銃がその典型である。
本来人を殺傷することを目的としたものではないが,用い方によっては人を殺傷することができるもの(警棒等)については,本来の武器ではないが,人を殺傷する用に用いられるときは,武器に準ずるものとして,この規定が適用されることになる。
人を殺傷するとは,人を死亡させ,又は重い障害を与えることを意味するのであって,単に人に軽度な障害を与える程度のものを含まない。催涙ガスについても,それが人に対して一時的催涙効果を及ぼし,人の行動力を減退させるものであり,武器に当たるものと解されている。
問3 次は,器物損壊罪に関する記述であるが,誤りはどれか。
本罪の構成要件上の実行行為は,他人の物を損壊することであるが,「損壊」があったというためには,対象物の物理的な破壊ないしその形状の変更を伴うことが必要であり,そのいずれもない場合には,「損壊」があったとはいえない。
家屋の一部ではあるが取り外しが容易なガラス戸や雨戸を損壊しただけでは,本罪が成立するにとどまり,建造物損壊罪は成立しない。
本罪については,いわゆる親族間の特例は定められていない。
詐欺罪の犯人が騙取した財物を事後に損壊したとしても,本罪は成立しない。
動物も本罪の客体となり得るが,本罪の客体は「他人の物」に限られていることから,野生の動物は本罪の客体とならない。
問4 次は,緊急逮捕に関する記述であるが,誤りはどれか。
緊急逮捕後に,被疑者を司法警察員に引致したところ,司法警察員が留置の必要なしと判断して被疑者を釈放した場合であっても,緊急逮捕をした以上,直ちに緊急逮捕状の請求手続を行わなければならない。
被疑者を緊急逮捕した後,犯行の目撃者が新たに判明したため供述調書を作成したときは,これを逮捕状請求の疎明資料とすることができる。
刑事訴訟法第210条は,緊急逮捕したときは「直ちに」逮捕状を請求しなければならないとしているが,この「直ちに」とは文字通りの意味ではなく,最小限度の疎明資料の作成に必要な時間内に,という意味である。
殺人未遂の被疑者を緊急逮捕し,逮捕状の請求手続をしていたところ,被害者が死亡したことが判明したとしても,逮捕状請求は殺人未遂の被疑事実で行うことを要する。
緊急逮捕の対象となる犯罪は,死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪に限られているが,これは,法定刑を基準に判断する。
問5 次は,道路交通法第72条に規定されている「交通事故の場合の措置」についての記述であるが,正しいのはどれか。
車両等とは,自動車,原動機付自転車,トロリーバス及び路面電車をいう。
当該車両等の運転者とは,当該交通事故の発生について故意又は過失のある運転者のみを意味し,被害者の立場にたつ車両等の運転者は含まないと解される。
交通事故が発生した場合の報告義務の内容は,交通事故が発生した日時及び場所,交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度,交通事故に係る車両等の積載物並びに交通事故について講じた措置であり,運転者の名前は報告義務の内容には含まれていない。
本条にいう「交通」とは,道路,すなわち歩道や路側帯をも含めた道路上における交通の意味であるため,ハンドル操作を誤り道路上に面する店舗内等に突入し,店舗内の人を傷つけた場合は,交通事故にはならない。
同条1項の前段の救護措置義務,若しくは後段の報告義務のいずれかに違反した場合には,緊急逮捕できる。