問1 次は,外国人に対する基本的人権の保障に関する記述であるが,誤りはどれか。
憲法第14条1項は,可能な限り外国人にも類推適用されるべきであると解されているが,判例は,株式会社が定款に取締役になり得るのは日本国籍を有する者に限るということを定めても,それは外国人に対する不合理な差別取扱いに当たらないとしている。
憲法第93条では,地方公共団体の長,その議会の議員はその地方公共団体の住民が直接これを選挙すると定めているが,我が国に在留する外国人のうちの永住者等に法律でこれらの選挙権を与える旨を定めても違憲ではない。
基本的人権の保障は,権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き,我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきである。したがって,我が国に在留する外国人は,憲法上我が国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求し得る権利を保障されている。
憲法第26条の「国民」とは,第25条と同様であり,日本国民のことである。しかし,外国人に対しても生存権の保障の趣旨をおし及ぼすのを否定する意味ではなく,外国人に対しても可能である限りこれを保障しようとするものと解される。
国民は,法律の定めるところにより納税の義務を負うが,我が国に在住する外国人も納税の義務を負う。
問2 警察の責務に関する記述のうち,誤っているのはどれか。
警察法は,個人の生命,身体及び財産の保護と,犯罪の予防,鎮圧及び捜査,被疑者の逮捕,交通の取締りその他公共の安全と秩序の維持とを警察の責務としている。警察活動は,この責務に限られ,また,その責務の遂行に当たっては,その権限を濫用してはならないとしている。
警察法第2条1項は,「警察の責務」として,個人の生命,身体,財産の保護と公共の安全と秩序の維持を挙げている。「責務」とは警察組織の任務を意味するが,責任を負うべきものであるという趣旨から,「任務」ではなく,「責務」という表現が使われている。
警察の責務の規定は,警察官個々の責務であり,他の行政機関の職員との関係をも含めて明らかにしているものである。
警察法は,警察事務を都道府県に団体委任し,各都道府県警察は,それぞれの管轄区域について警察の責務を負うものとしている。
警察の責務は,大別して,「個人の生命,身体及び財産の保護」と「公共の安全と秩序の維持」に分けられる。
問3 次は,事例と成立する罪名を組み合わせたものであるが,誤りはどれか。
甲は,運賃を支払う意思のないままタクシーを停止させ,目的地を告げて乗り込み,目的地へ向けて運送させ,目的地付近の信号交差点で停車中に運転手の隙を見て無言で降車し,そのまま逃げた(二項詐欺罪)。
甲は,車上ねらいを企て,駐車中の自動車内を物色していたところ,通行人乙に目撃されたため何も盗らずに逃げ出したが,乙が追跡してきたことから,捕まえられないように,乙に暴行を加えて路上へ転倒させ,そのまま逃走した(事後強盗未遂罪)。
友人乙から「遊び半分で作った」と言いつつ偽1万円札を見せられた甲は,乙からこれをもらい受け,喫茶店での支払いに際してこれを行使し,真正な1万円札であると誤信したレジ係員から釣り銭として9,600円を受け取った(偽造通貨行使罪)。
甲は,ピンクビラを配布する目的で,敷地入口に「ビラ配布お断り」と大書された立て看板のあるアパートの敷地へ立ち入り,共用部分たる廊下を一巡してピンクビラを各戸配布した(住居侵入罪)。
乙を強姦した甲は,乙のハンドバッグに在中していた財布を見るや,これを持ち去ることを企て,強姦に際して加えた暴行により既に反抗が抑圧されている乙に「これ,もらっていくからな」と申し向けた上で,財布を持ち去った(強盗強姦罪)。
問4 次は,弁護人の選任に関する記述であるが,誤りはどれか。
任意で取り調べていた被疑者が弁護人を選任したい旨を申し立て,弁護士への通知を求めてきたとしても,これに応じるべき法的義務はない。
被疑者は,妻が選任した弁護人を気に入らない場合であっても,妻の意思に反して解任することはできない。
弁護人は,弁護士の中からこれを選任しなければならないのが原則であるが,簡易裁判所,家庭裁判所又は地方裁判所においては,裁判所の許可を得たときは,弁護士でない者を弁護人に選任することができる。
公訴の提起前にした弁護人の選任は,第一審においてもその効力を有する。
被疑者の法定代理人,保佐人,配偶者,直系の親族及び兄弟姉妹は,独立して弁護人を選任することができる。
問5 次は,道路交通法に規定されている警察官の権限についての記述であるが,正しいものはどれか。
警察官は,手信号その他の信号により交通整理を行うことができるが,公安委員会の設置した信号機の表示する信号と異なる意味を表示する手信号を行うことはできない。
警察官は,道路における交通の円滑を図るためやむを得ないと認めるときは,必要な限度において車両の通行の禁止等を命ずることができるが,これは高速自動車国道においては行うことができない。
警察官は,過積載車両が運転されているときには,停止させ,自動車検査証等の提示を求め,重量を測定することができるが,これは即時強制権を定めたものである。
警察官は,車両等の乗車,積載又はけん引について,危険を防止するため特に必要があると認めるときは,停止させ,必要な応急の措置をとることを命ずることができるが,これに従わないときは,警察官が実力を行使して必要な措置をとることができる。
車両に乗車しようとしている者が,酒気を帯びて車両等を運転するおそれがあると認められるときは,呼気検査をすることができるが,道路交通法上,呼気検査は,その者の呼気を風船に吹き込ませることにより,採取する検査方法のみが認められている。