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贈収賄罪の理論と捜査
[改訂版]

■弁護士(元最高検察庁検事) 永野 義一 著
■平成19年6月発行
■税込定価 2,304 円(本体 2,095 円)
■A5判上製 / 319頁
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● 概要
 贈収賄事件において、実務上問題となる事項を重点的に解説

● 推薦のことば
 公務員の職務の公正は国家の基盤であり、行政や政治に対する信頼度のバロメーターにもなりうる。しかし、残念ながら今日、その信頼に陰りを感じさせる事犯が見受けられることも事実である。その代表的な事象が、贈収賄事犯といっても過言ではない。贈収賄事犯は、秘密裏に行われ、法律の適用面においても困難が予想されるだけに、事件として表面化するのは、氷山の一角かもしれない。したがって、複雑巧妙化する贈収賄事犯に対して、捜査機関としては、より緻密で忍耐強い捜査が必要となってくるのである。 この難解な贈収賄罪を、その法解釈と実際の捜査の両面から解説したのが本書である。特に、参考になる事例の多くを挙げて、適正な捜査の実行にまで及んで解説しているのが、本書の特色といえよう。 著者は東京地検特捜部など現場の経験も豊富で、本書は現場サイドから見た種々の問題点を詳細に検討しており、「企業犯罪と捜査]に続く好著といえる。
 平成8年8月  前検事総長 吉永 祐介

●序 はしがき
 国を支える政・官の綱紀が弛緩し賄賂が横行するような事態になれば、それは民主国家の根幹を危うくすることとなる。国家社会の体制が腐敗すれば国が傾き滅んで行くことは東西の歴史が証明するところである。国の行政や政治に潜在して巣食う贈収賄事犯を適宜摘発検挙することは警察・検察等捜査機関にとっての重要な責務である。 しかし、直接には被害者がおらず、隠密裡に推移している贈収賄事犯の適正な捜査は、その端緒の把握の困難性を始め、物証が少なく被疑者ら関係者の供述を立証の支えとせざるを得ないなど幾多の隘路がある。また、賄賂とされる利益の授受が当該公務員の職務に関してなされたものか、職務権限、賄賂性の認識の有無など、事実認定、法律適用の両面においても、重要で困難な問題が山積している。 本書は、この一番難しいとされる贈収賄事犯の捜査・処理に取り組む警察官を始めとする第一線捜査官の一助になればと思い、筆者が東京高検、横浜地検に勤務していた当時、雑誌『警察時報』に「賄賂罪と捜査」と題してシリーズとして掲載した拙い小論文を加筆訂正したものである。あくまで、一捜査官としての立場、見地から自分の経験を織りまぜつつ記述したものであり、賄賂罪の解説、教科書といったものではないことをお断りしておく。実務上問題となる事項を重点的に解説したつもりで、例えば、一般の解説書ではまず賄賂罪の主体から叙述されるのが普通であるが、贈賄罪の主体にはなんら制限がなく、収賄罪はいわゆる身分犯で公務員が中心となるが、それは任免等根拠法令を予め把握しておけば足り特段問題となることもないので、本書では省略した。それに、日本銀行等の特殊法人の役職員についてそれを公務員とみなすいわゆるみなし公務員や破産法にいう破産管財人など特別規定によってその賄賂授受行為を処罰する旨規定した法令があるが、これも同様その根拠法令を調査把握しておけば格別問題は生じないと考える。 本書の構成は、贈収賄罪の法解釈と捜査の実践に分け、難解な贈収賄罪の構成要件を理解してもらうため実際の裁判例を事例として揚げそれに則して解説するという体裁をとった。なお、本書中の意見にわたる部分は、すべて筆者の個人的見解である。「保険犯罪の捜査の実行」は、海外を舞台とする保険金目的の殺人事件という難事件に警視庁捜査一課と共に捜査・処理に当たった実録である。この種事犯の捜査を進める上で参考になればと考え「付」として掲載した。 本書の刊行にあたり、師と仰ぐ吉永祐介前検事総長・弁護士から身に余る推薦のお言葉を賜りました。警察時報社の荒井哲也氏を始め編集スタッフの皆様にも大変お世話になりました。ここに紙面をかりて厚く御礼申し上げます。

● 改訂版はしがき
 早いもので本書を出してから10年の歳月が流れた。この10年間は、私にとっては最高検検事を最後に検事を退官、独立して弁護士事務所を開設、試行錯誤を重ねながら、民事訴訟や刑事弁護等弁護士業務に専念するなどはなはだ多事であった。贈収賄事件についても、地検特捜部在籍時を始め検事在職中は、政・官界潜在する賄賂事犯の摘発に鋭意努力を重ねたが、弁護士になってからは、立場が逆となり一転して、警察・検察からこれら収賄容疑で謙虚、起訴されるに至った政治家、地方自治体の長、国家公務員ら個々人の悲劇を肌で感じたのである。 刑法の贈収賄罪に関連する規定、条文の構成要件等その根幹には改正はないが、この10年間に贈収賄事犯の捜査を遂行するうえで欠かせない注目すべき判例が2、3出ているので、これを機会に、これら新たな判例の引用とその若干の解説を主とする改訂版を出すこととした。
 平成19年5月  永野 義一
● 目次

序 はしがき
第1編 刑法の贈収賄罪をめぐる諸問題
第1章 職務権限に関する問題
  第1 はじめに-職務権限と賄賂の関連性
  第2 職務権限の根拠-職務行為
   1 公務員のアルバイト的行為(副業)
   2 上司の命令(特命)による職務
   3 機械的な事務で最終決定権を有しない者の職務
   4 行政指導
   5 転職前の職務(職務権限を異にする他の職務に転じた公務員が前の職務に関し金品を収受した場合)
   6 当選を条件とするなど将来担当することが不確実な職務
  第3 職務と密接な関係のある行為(職務密接関連行為)
   1 「職務と密接な関係のある行為」(職務密接関連行為)概念の意義、要件
   2 判例の動向 職務密接関連行為の類型
   3 職務密接関連行為の範囲-捜査上の留意点
   4 事例の検討
第2章 賄賂-贈収賄罪の客体
  第1 賄賂の意義
   1 社交的儀礼と賄賂の限界
   2 政治献金と賄賂の限界
   3 官公庁に対する寄付金と賄賂
   4 研究・調査等の嘱託に伴う謝礼と賄賂
  第2 賄賂の目的となる利益
   1 はじめに、問題の所在
   2 財産上の利益
   3 非財産的利益
   4 不確実な将来の利益
   5 事例の検討
第3章 実行行為-収受・約束・要求の意義
第4章 贈収賄罪の態様
   1 受託収賄罪
   2 事前収賄罪
   3 第三者供賄罪(第三者収賄罪)
   4 加重収賄罪(枉法収賄罪)
   5 事後収賄罪
   6 あっせん(斡旋)収賄罪
   7 贈賄罪
第4章 贈収賄罪の態様
   1 賄賂の没収・追徴・刑法197条の5の立法趣旨
   2 没収・追徴の対象者
   3 没収・追徴の対象物
   4 特殊な没収・追徴
   5 没収・追徴の範囲
   6 没収・追徴に関するその他の問題点
   7 事例の検討
第6章 贈収賄罪における共犯の問題
   1 はじめに
   2 必要的共犯
   3 収賄罪と共犯
   4 事例の検討
第2編 贈収賄事件の捜査の実行 実践編
   1 はじめに
   2 贈収賄事件の特徴
   3 贈収賄事件捜査への取組姿勢
   4 捜査の端緒の把握と事件性の見極め
   5 内偵・基礎捜査(任意捜査)
   6 強制捜査の必要性とその着手時機・方法
   7 逮捕・勾留・保釈
   8 捜索・押収
   9 被疑者・参考人の取調べ
   10 弁護人との接見交通をめぐる問題
 (付)保険犯罪の捜査の実行-ある保険金目的の殺人事件から
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