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警察教育学入門

■宇田川 信一 著
■平成6年4月 2版発行(昭和63年1月発行)
■税込定価 1,601 円(本体 1,456 円)
■A5判 / 350頁
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● 概要
 教官、教育担当者の姿勢等のあり方や教養訓練の進め方の基本的な方向を示す。

● 推薦のことば
 私と著者との出会いは、10年近く前、彼が警視庁少年第一課長で、少年心理研究会代表として「少年の自殺防止十則」を発刊され、ベストセラーになった頃のことです。 当時、痛ましい少年、少女の自殺が、悲報として連日のように伝えられていました。 今まで元気だった子どもを失った親の悲嘆はさっするにあまりあったのです。 この防止十則には、第一則に「自殺のサインを見落すな」というタイトルがあり、これを読み、子どもからは助けを求めているサイン(予告兆候)が必ず出されていることを知り、子を持つ親として、その親が気付かなかったことに、りつぜんとした印象が強く残っています。 このたび著者が、新人教育の実戦学ともいうべき書を発刊されると聞き、警察という特殊な分野だけに「何かが得られる」と興味をおぼえたのです。 現代社会は、いうまでもありませんが、分業化されていますから、その道は、その道の専門家にまかされています。 だから専門家は、その道一筋に磨きをかけ、深めていきます。 そこで、当然ながら専門外には関心がなくなるようです。 それはそれで尊敬されましょうが、えてして、「専門バカ」に落ち入るきらいがあるようです。 どんな企業でも、これからの時代は、むしろ専門外でもワイドに視野を広げて、自分の足もとを見直すことにより、新たな前進が期待されるものだと思います。 人間に教養が必要なのは、人間の視野をより広くするためのものだと言われていますが、その教養は、「専門バカ」にならないためにも、各方面の分野で人間観を学んでみる必要があるのではないでしょうか。 さて、治安の良さは、世界一だと言われている日本警察の秘密は、どこにあるのでしょうか。 日本が単一民族だからとか、国民の協力関係がいいからとかいろいろ言われていますが、結局、警察教育の素晴らしさに、私は脱帽したいのです。 警察官は、特殊な人間の集まりだと言われるのであれば話は別ですが、私はそうは思わないのです。 どこにでもいる若者が警察官を志願して、教養訓練を受け立派に育って、今日の日本警察の組織を支えているのです。 そこで、私は一人前の警察官を育成している教育集団に大いなる関心があるわけです。 本書を読み進んでいくうちに、固いはずの教養書が、人の心理のしくみに触れたりして、苦笑し、途中で止まらなくなってしまいました。 巡査から警視監まで昇りつめた著者が、酸いも甘いも噛み分けた職業人としての体験を主体とした文章だからでしょう。 コミックとは別の面白さが、こみあげてきて深く感動しました。 一般の企業で、新人教育を担当されている管理職の皆さんにも、ぜひ読んで欲しい書の1つです。
 昭和62年初冬  石ノ森章太郎

● まえがき
 どんな企業でも、組織を強くするものは、人であることにちがいはない。 日本警察の強さの根底には、いうまでもなく青年警察官の旺盛な活力が重要な役割りを果たしている。 特に、青年警察官の指導育成の効果は、直ちに警察力の充実強化につながるものといっても過言ではない。 さて、そのためには、現代成年の特性をいかに理解して、これを、つかむべきかまた、変化の時代に対応した実戦力をどのようにして、備えるべきか、その工夫努力が最も肝要だといえる。 はじめに、新任警察官や、新入社員の段階では、その職業意識など、いかにして、育てたら良いのか、そのための教育手法が問われてくる。 本書は、まず警察官を志願した現代成年の特性に焦点を合わせ、「彼らは、何を考え、何を望み、何によって燃えるのか」、また、彼らを一人前の警察官に育てるために、教官教育担当者の姿勢、態度は、どうあるべきか、更には、この教養訓練をどう進めるかなどについて、基本的な方向を示そうとしたものである。 このことは、企業における新入社員の教養訓練にも共通し、いわばプロとしての職業人の人造りで、ズバリと答える教育入門書でもある。 ここでは、警察官の専門的な知識、技能や教養訓練のテクニックに終始しているわけではない。 その職に必要な知識、技能は、しょせん、職業人としての「付加価値」にすぎないと思うからである。人は理知のみでは生きられない。 すべて、人の営みは、その感情、感性、情操、心などが重要な基盤になっている。 だから、立派な職業人としての本質的要素、いわば精神面の育成をより重視したいと私は念じている。 即ち、本書ではプロの職業人としての「基本価値」をいかにして高めるかに終始しているし、理知である「付加価値」はむしろ、心情の「基本価値」を高める手段にすぎないという側面がある。その基本価値とは何か。勿論、単に、学問、知識や技能の問題ではない。それは、その職業人にふさわしい人間性の所在する価値概念としての問題である。 今日のように、ますます複雑、肥大化する管理社会にあっては、自分の生きがいすら見いだせなくなった人たちが少なくない。 とりわけ、その職への誇りと使命感とか、やる気とか、正義感、責任感、充実感、勇気、友情、愛、謙虚さ、質素など、もろもろの価値でさえ、希薄化の傾向にあると、言われている。 だが、このもろもろの価値こそが、人間の本質的価値であり、職業人に求められる「基本価値」といえるのである。 社会における職業人の役割りとしての自分の責任を全うするためには、自からの人格を大切にし(自敬の念)、もろもろの価値を高める一層の努力が必要なのである。 このことは、「人間を深く理解し」、「世の中がよく見えてくる」ための必要条件であり、これが教育のすべての出発点であり、終着駅だと、私は考えている。 したがって、本書の全体のトーンは、世の中をよく見るための「ものの見方、考え方」「人間理解」等に着眼してこれをいかに教えたらよいかに在るものと言ってもよい。 ともあれ、この書は、すでに「教官、助教に関する8章」として、月刊「警察時報」に連載したものと、「警察学論集」に登載したものに手を入れ、書き足してまとめたものである。「警察教育学入門」というタイトルをおこがましくもつけてはみたが、その内容は、警察大学校での私の講義内容の一部にすぎないし、また、視野も狭く、悔やまれる部分もある。 しかし、自分のいままでの立場を見直すよい機会ともなり、出版社側からの勧めもあって、とにかくまとめてみた。 意を尽くし得なかった点については、賢明な諸兄のお許しをいただきたい。 また、本書の刊行にあたり、温かいご支援をいただいた石ノ森章太郎先生および、大変お世話になった出版社の皆さんに心から感謝申し上げたい。
  昭和62年初冬  警察大学校  講師 宇田川 信一
● 目次

第1章 教官心得法
  1、教官に求められる資質
  2、開店のときの心を忘れるな
  3、向きを変えて学べ
  4、個性的な学級運営を
  5、指導技法の研さんと生活指導を重視
 
第2章 目標管理法
  1、職業意識に徹した警察官の育成
  2、教育目標と指導要点
  3、対象目標の分類と管理
 
第3章 新人類操縦法
  1、達人の目
  2、現代若者の特性のは握
  3、新人類といわれる若者への教育姿勢
  4、若者の変化を見落すな
  5、気働き操縦法
  6、マニュアル教育法と教育的管理
 
第4章 自立育成法
  1、教育の本質
  2、芋子目論
  3、教官のなげく声
  4、信頼
  5、上手なほめ方、叱り方
 
第5章 学級運営法
  1、学級運営の考え方と進め方
  2、学級目標の設定と進め方
  3、個々の指導上の問題
 
第6章 精神育成法
  1、職業倫理の基本育成
  2、「誇りと使命感」の育成
  3、国民の信頼と期待への基盤
  4、温かい精神面の充実
  5、ぐらつかない強さの育成
 
第7章 学習指導法
  1、効果的な学習指導の条件
  2、フローチャート式学習指導案
  3、指導技法の実際
 
第8章 生活指導法
  1、生活指導の課題
  2、生活指導の方法原理
  3、問題行動の指導
  4、指導実例と留意点
 
第9章 教育評価法
  1、概念
  2、教育評価の目的
  3、評価の対象と手順
  4、評価の用具
  5、教育計画と学校評価
 
第10章 自己啓発法
  1、目標の設定
  2、人格形成
  3、読書論
  4、問題意識
  あとがき

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