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企業犯罪と捜査
事例中心に経済事犯を裁く

■東京地検特捜部副部長 永野 義一 著
■平成4年7月 第2版発行(平成4年3月発行)
■税込定価 2,563 円(本体 2,330 円)
■A5判 / 350頁
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● 概要
 株取引に関わる問題点や特別背任等の代表的な経済事犯について解説。

● 推薦のことば
 最近マスコミ界等を揺がす社会問題の1つに経済事犯、その中でも特に企業犯罪や会社事犯と呼ばれている事件がある。これについては各方面より報道されている部分が多いが、その手段は複雑巧妙であり、組織的且つ会社ぐるみのケースが少なくない。又、現在に限らず、今後においても発生する可能性を秘めており、その手口も年々複雑化する事が予想される。しかし、これを野放しにする事は当然許される訳もなく、その捜査においても更に努力するとともに専門的な知識が必要となってくるであろう。 一口に企業犯罪と言ってもその内容は滝に渡り、その全てを解説する事は至難の業であるが、株取引に関わる問題点や特別背任等現在話題になっている経済事件をも含め、その代表的な事犯を本書では解説している。 著者は東京地検特捜部においての経験も長く、当然捜査においても一線の現場で数々の体験を重ねている。そういった目から見た企業犯罪という事件を事例も含め解説し、捜査上の留意点にまで及んでいるのが本書である。 一線の捜査官は勿論の事、企業人においてもその職務遂行上、本書は大変参考になると確信している
 平成4年2月  大阪高等検察庁 検事長 吉永 祐介

● まえがき
 一般に企業犯罪、会社事件とは、商法罰則に該当する商法違反事件を始めとして、会社更生法・破産法等の各罰則に該当する事件、銀行法・相互銀行法・出資の受入れ、預り金および金利等の取締等に関する法律(出資法)等の各罰則に該当する事件、いわゆる金融犯罪、証券取引法・商品取引法の各罰則に該当する事件、特許・商標等の工業所有権法・不正競争防止法・独占禁止法等の各罰則に該当する事件、その他会社企業に関係のある事件で会計帳簿の記載や企業間の商取引の内容が捜査の中心となる事件を総称する。 本書は、主としてそのうち、筆者が東京地検特捜部等に勤務し、いささかなりと直接捜査に関与した商法違反事件、証券取引法違反事件等を中心に、捜査や公判を遂行する上で隘路とされる法律適用上や事実認定上の問題点につき、試験をまじえながら検討を加えたものである。 近時、いわゆるバブル経済の破綻の影響もあってか、企業活動をめぐって生ずる犯罪が頻発し、この種企業犯罪の取締り、早期摘発、適正なる刑罰の適用の必要性が強調されている。しかし、この種企業犯罪の摘発を成功裏に収めることは容易ではない。まず、専従する捜査員各自が簿記・会計の実務にある程度習熟していることが要求されるし、商法・証券取引法等の特別法に対する深い知識も当然必要とされる。それに、操作に当たっては、なによりも長期間を要する苦労の多い地道な帳簿・銀行捜査等の内偵捜査が必須とされ、それに、企業組織体ぐるみの犯罪といっても、刑法の個人責任の原則上、刑事責任を追求されるのは行為者である個人であるがゆえ、この種事件の性格上どうしても処罰対象者は末端の者にとどまりがちで、根源を突くに至らず、企業犯罪の抑止という刑政の目的を達せず終結するという事例が多く、いずれにしても、打破すべき難問が山積みし、捜査は容易ではないのである。本書は、主として、この困難な企業犯罪を始めとする一般の知能犯罪に日夜献身的に取組み捜査に携わっている捜査官とりわけ警察官の参考になればと思って執筆したものである。 本稿の多くは、筆者が法務総合研究所に教官として勤務していた当時、警察時報社編集部の方から勧められるまま浅学非才の身を顧みず執筆したものを、加筆訂正したものである。なお、「被疑者の取調べ」「取調べ雑感」は筆者の気儘な捜査感を述べたもので、三校までに「付」として掲載させて戴くこととした。 本書の刊行にあたり吉永祐介大阪高等検察庁検事長から身に余る推薦のお言葉を賜りました。警察時報社の専務取締役荒井哲也さんをはじめスタッフの皆様にも大変お世話になりました。ここに紙面をかりて厚くお礼申し上げます。

● 目次

まえがき
第1 企業犯罪についての考察
第2 特別背任
   1 はじめに-問題の所在
   2 犯罪構成要件をめぐる問題
   3 捜査上の留意点
   4 自己取引-取締役会社間の取引・利益相反取引
   5 競業避止義務違反
   6 会社財産の私的用途への支出
   7 私的用途への支出としての手形・小切手の振出
   8 選挙資金、政治献金等への支出
   9 賄賂、選挙買収等違法目的への支出
第3 会社財産を危うくする罪(会社財産危殆罪)
   1 はじめに-意義
   2 裁判所又は総会に対する不実の申述・事実の隠蔽-幽霊株の禁止
   3 自己株式の取得
   4 粉飾決算
   5 営業の範囲外における投機取引
 
第4 預合い
   1 はじめに-問題の所在
   2 預合いの犯罪構成要件をめぐる問題
   3 公正証書原本不実記載罪等他の犯罪との関係
   4 捜査の実行
第5 株券の偽造・虚偽記入
   1 はじめに-問題の所在
   2 株券の偽造・虚偽記入の意義
   3 会社設立により株式を発行した場合における株券の偽造・虚偽記入の成否
   4 増資により新株を発行した場合における株券の偽造・虚偽記入の成否
   5 ダブル株の発行
第6 会社役職員の涜職(とくしょく)
   1 はじめに-発起人・取締役等の涜職罪の立法趣旨
   2 犯罪構成要件をめぐる問題
   3 経済関係罰則の整備に関する法律違反罪・特別背任罪等との関係
   4 事例の検討
第7 企業秘密の侵害-いわゆる産業スパイ
   1 はじめに-問題の所在
   2 有形的企業秘密の侵害
   3 無形的企業秘密の侵害
   4 捜査上の留意点
第8 金融犯罪
   1 はじめに
   2 貸付業務に関連する犯罪
   3 預金業務に関連する犯罪
   4 銀行捜査
第9 詐欺破産-破産犯罪
   1 はじめに-倒産をめぐる犯罪
   2 破産犯罪の構成要件
   3 捜査、公判上の問題
第10 裏金
   1 裏金に関する捜査の必要性
   2 リベート、粉飾経理等による裏金設定
   3 裏金の使途-使途不明金
第11 総会屋等に対する利益供与の禁止規定についての一考察
   1 はじめに
   2 株主の権利の行使に関する利益供与の罪の保護法益、罪質をいかに捉えるか
   3 犯罪構成要件をめぐる問題
   4 新規公開株式・公募増資株式・新規発行転換社債(Convertible Bond)の優先的割当、いわゆる「親引け」は財産上の利益の供与といえるか
第12 株価操作
   1 はじめに-問題の所在
   2 仮装売買・馴合売買の禁止-証券取引法第125条第1項
   3 現実取引による相場操縦・情報の流布・虚偽の表示等の禁止-証券取引法第125条第2項
   4 安定操作-証券取引法第125条第3項
   5 捜査の実行
第13 インサイダー取引の禁止
   1 はじめに
   2 インサイダー取引禁止規制の趣旨
   3 犯罪構成要件をめぐる問題
   4 公開買付け等情報に係る取引の規制
   5 捜査の実行
   6 事例の検討
第14 工業所有権の侵害
   1 はじめに-工業所有権の意義など
   2 犯罪構成要件をめぐる問題
   3 捜査の実行
   4 事例の検討
 【付】
◎被疑者の取調べ-ある殺人事件の捜査から
   1 はじめに-取調べの重要性
   2 自白した真犯人が一部虚偽の供述をしていた事例(殺人から強盗殺人へ)
   3 共犯関係のある被疑者の取調べ(強盗殺人から殺人へ)
◎取調べ雑感

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