戻る お申し込み
● 概要
監督・教養について第一線で長く携わってきた著者が、指導者・監督者としてのあり方から指導方法までを網羅的に解説。
● はじめに
この書を書くことになったのは、5年ほど前の夏頃、恩師であり上司であった前警ら部長森本定一警視長から14・5年程前に監督者教養のテキストとして作成した監督者研修基本課程を素材として、監督者向けの書物をだしてはどうかとすすめられ、それではというわけでとりかかったものである。
その間出勤前の2、3時間を活用してまさしく朝めし前に書いたけれども、それは朝めし前どころではなく、私としては、何回となくもうやめようかと思ったことがあったが、当時は、外勤教育隊の副隊長であったところより若い警察官に接することが多く、彼らが職場で、寮で真剣にとりくんでいる姿にうたれこの若い人達のためにも俺はダラ幹になってはならない、何といっても監督者がしっかりしなければならない、などどいいきかせ、はげまされて仕上ったものである。
その後なおどうしようかと迷っていたが、警察時報社の高橋氏のすすめもあり同社の一昨年の9月、10月、12月号の付録として出さしていただき、さらにそれを補正検討した結果警友諸氏に問いたい気持ちで「警察監督論」といったまことに大上段にふりかざした名前で1冊の本としてこの度出すことになった次第である。
顧みると、私がこの問題に頭をつっこみだしたのは、たしか、昭和31、2年の頃と思う。当時、警察学校の教官として勤務していた私は、学校長であった森本定一警視長の人間尊重の教育方針にもとづいた生活指導方策について模索中・TWI、MTP、CCS、JST等の監督者訓練方式の存在を知りその研修をうけさらに私自身、勤務終了後各種講座をうけ、また監督専科教養の推進に伴う研究等とも相まって今日に至ったものである。
したがって、そこには多くの上司、先輩、同僚、部下の意見、思想が注入され、結集されている。
今渡しは、私を今日まで育ててくれた多くの人達および警察に感謝の気持で一杯であり何らかの恩返しをすべきだと思っている。それは私の後輩に少しでも立派になってもらうようにつとめること、若い人達がこの警察をこよなく愛する職場とするようにつとめることであろうし、さらに若しこの書物による経済的な収入がありとすれば、いささかでも若い人達のために捧げたいと思っている。
なお本書出版に際し、終始、指導激励を賜った歴代の本部長および多くの上司の方々またすすんで浄書補正をして下さった田口警部その他の外勤教育隊の幹部の方々さらには合田主幹・浅井主事ならびに心よく文章の引用をお許し下さった山岡光盛先生その他の方々にこの紙上をかりて改めて心からお礼申し上げたい。
昭和46年5月 福 本 義 男
● 改訂にあたって
昭和46年に出版以来多くの方々に御愛読賜っているところより、その内容についてさらに検討充実すべく、幾度か改訂しようと思いながら、その都度諸般の事情により着手することができず今日に至っていたものであるが、昨年警察時報社の荒井専務様より改訂についてお話があった。
いろいろ考えたところ、この書物の素材である理論・資料等については出版当時のものであり、あるいは「古い」という批判は受けるかもわからないが「管理・監督」の原理については不変であり、原則についても時代の経過により大きく変化するものではなく現代でも適応するものと考えられるところより、とりあえず用語その他等について現代風に改めることとし、今回若干の改定を行うこととした。
現在社会人となった私のところへも多くの警友諸氏から「読後感」を寄せられ、今更ながら幹部の方々の研鑽を通じ警察活動発展の一助ともなっているのでは……と、ひそかに喜んでいるところであり、改訂版についても更に多くの方々に御利用頂ければ望外の幸せと思っています。
なお、前述の『はじめに-の「さらに若しこの書物による経済的な収入がありとすればいささかでも若い人達のために捧げたいと思っている。」』とお約束したことについては、ある形をもって実行させて頂いていることを申し添えます。
平成9年3月
● 目次
第1章 現代の監督
あてがいの監督から脱却しよう
第1節 監督者
1 監督者の意義
2 組織内における監督者のあり方
(1)上司との関係(補佐の関係)
(2)同僚との関係(連絡協調の関係)
(3)部下との関係(指揮監督の関係)
第2節 監督者の職務
1 仕事の管理
2 部下の正しい人間管理
3 部下の教養訓練
4 業務の改善
第3節 監督者としての要件
1 業務に関する知識技術
2 指導力(リーダーシップ)
3 人間的資質
第4節 警察幹部としてのモノの見方、考え方、仕事のすすめ方
1 幹部としてのモノの見方、考え方
2 監督者として仕事をすすめていく場合の留意点
第2章 管理
<実務編>
第1節 計画(りっぱな計画をたてる)
1 計画の意義等
(1)計画の意義
(2)計画の重要性
(3)計画の策定要領
2 計画の科学性
3 計画策定の要領例
第2節 組織(適切に割当をする)
1 組織の意義等
(1)組織の意義
(2)組織原則理解の重要性
2 組織の原則
(1)職務分担の原則
(2)命令系統の原則
(3)監督範囲の原則
(4)責任と権限の原則
第3節 命令(適切に指揮命令する)
1 命令の意義等
(1)命令の意義等
(2)命令には科学性と人間性とを
2 命令の与え方
(1)基本的な仕事の命じ方
(2)特別な仕事の命じ方
(3)命令を与える場合の監督者の態度
(4)命令には質問を
3 命令の形式
4 命令の内容
5 命令の受け方
(1)メモによる受命
(2)復唱
6 復命
第4節 統制(仕事を検討する)
1 統制の意義
2 統制のし方
3 統制の根底にあるもの
(1)監督者の人格的統率力
(2)監督者としての自己統制手段
第5節 調整(調和と総合をはかる)
1 調整の意義等
2 調整の原則
3 調整の方法
<理論編>
第1節 管理の意義
第2節 管理の原則
第3節 管理原則の展開
1 管理活動基本の認識
2 管理原則・技法の教条主義的適用の排除
第4節 責任権限等に関する基礎知識
1 責任と任務
2 職務の三面等価
3 責任と権限の分配
4 任務の段階
第5節 管理に関連する諸問題
1 目標による管理
(1)Y理論(目標づけによる管理)とX理論(指示と統制による管理)
(2)Y理論の導入
2 方針
(1)方針の意義
(2)方針策定の手法
(3)方針の機能
3 長期計画
(1)長期計画の意義
(2)長期計画の目標
(3)短期計画との関係
(4)長期計画の構成内容
(5)長期計画策定にあたっての考え方
4 組織
(1)委員会制度
(2)公式組織と非公式組織
(3)複合管理組織
(4)組織についての検討
5 職務分析
6 総合運営
(1)総合運営の意義
(2)総合運営を阻害する問題点
(3)総合運営対策
第3章 人間管理
<基本編>
第1節 管理と人間管理との関係
(1)職場の姿を見よう
(2)管理と人間管理との関係
(3)人間管理能力育成の必要性
第2節 人間関係論
1 人間関係論の思想
2 人間関係論の本質
<実践編>人間管理の9原則
第1節 理解と信頼-人間管理の第一原則
(1)部下を理解するには
(2)相互信頼と敬愛
第2節 能力の開発発揮-人間管理の第二原則
1 人間管理における部下の能力の開発発揮
2 能力の開発発揮の要領
3 人のムダをなくそう
第3節 勤労意欲の振起-人間管理の第三原則
1 人間尊重の処遇
2 問題の援助
3 処遇の公平
4 希望と誇りの付与
第4節 参加と創意の尊重-人間管理の第四原則
1 参加と創意尊重についての考え方
2 参加と創意尊重の基本
3 参加と創意尊重推進方策
(1)参加と創意尊重の制度的推進
(2)指導監督の場における参加と創意尊重
4 積極性を示す要領
第5節 問題の解決-人間管理の第五原則
1 職場問題の処理
2 問題の兆候
3 問題解決の手順
4 問題解決の心構え
第6節 健全な意思疎通-人間管理の第六原則
1 人間管理における意思疎通の重要性
2 組織内における意思疎通
3 意思疎通の阻害原因
(1)監督者における問題
(2)部下職員自身の問題
(3)制度の不備欠かんの問題
4 意思疎通方策
(1)意思疎通のための組織制度の設定
(2)監督者・職員の教養訓練の実施
(3)意思疎通の良好な職場気風の醸成
第7節 健康管理-人間管理の第七原則
1 職場における健康管理の基本
2 健康管理に影響を及ぼす要因
(1)勤務環境、勤務内容の健康に及ぼす影響
(2)私生活の健康に及ぼす影響
3 健康相談
4 精神健康管理
5 健康増進対策
(1)疲労防止対策
(2)栄養の指導
(3)スポーツ、レクリェーションの指導と奨励
第8節 規律の振粛-人間管理の第八原則
1 規律の必要性
2 警察規律の意義
3 警察規律の本質
4 規律確立方策
(1)指導教養の徹底
(2)点検教練の推進
(3)指導監督の適正
(4)率先垂範
(5)信賞必罰の実施
5 規律確立の根底にあるもの
(1)良好な勤務環境および明確な職場規範
(2)職責の自覚および集団規範の確立
(3)有能な監督者
6 規律背反者発生時の処置
第9節 士気(モラール)の高揚-人間管理の第九原則
1 職場のモラール管理の必要性
2 士気の概念
(1)士気(モラール)の要素
(2)士気(モラール)を規定する要因
3 士気高揚方策
(1)士気高揚の制度的対策
(2)指揮監督の場におけるあり方
第4章 業務改善
第1節 警察行政の指導理念としての能率主義
1 警察運営の至上命題としての能率主義
2 公務能率の特質
(1)公務能率の特質
(2)公務能率測定の困難性と必要性
(3)過失の絶対的回避
第2節 改善の重要性
第3節 改善要領
1 改善の基本的な視点
(1)業務全般についての分析視点
(2)原因分析と改善方向
(3)警察業務改善の6視点と改善ヒント
2 改善の目標
(1)改善の4目標
(2)手段選定上の留意点
(3)改善の方法
第4節 改善についての監督者の役割
1 改善についての監督者の役割
2 改善にあたっての留意点
3 改善は、部下とともに
第5節 改善推進の諸方策
1 改善推進のための組織制度の確立
(1)改善委員会
(2)提案制度
(3)週間運動
2 改善教育の実施
3 改善意識の高い職場環境の育成
第6節 改善に関する諸問題
1 事務管理
(1)事務合理化の必要性
(2)事務合理化の対策
(3)事務合理化推進の基礎
2 職務配分による部門業務の改善
3 執務環境
第5章 指導教養
<実務編>
第1節 警察教養
第2節 受け入れ前の教養
1 人的構成と教養対象者の性格等の傾向
2 受け入れ前の教養要領
第3節 受け入れ時の初期教育としての教養
1 教育活動の基本
2 教育活動の概要
3 教育活動に関する諸問題
第4節 警察署における新任警察官教養
1 新任警察官教養の3段階
(1)警察署受入れ段階
(2)基礎教養段階
(3)基本教養段階
2 新任警察官指導教養上の留意点
第5節 警察署における実務教養
1 実務教養の計画の要領
2 実務教養の実施要領
3 実務教養の検討要領
第6節 指導教養の目標
1 指導教養の目標-期待される警察官僚
2 期待される警察官育成
(1)個人としての精進の道
(2)組織制度の検討
第7節 教育者としての監督者の考えるべきこと
1 監督者は教育に対する情熱をもて
2 教える立場にある者として考えておくべきこと
<特別指導教養編>
第1節 生活指導
1 生活指導の基本原理
(1)生活指導の意義
(2)生活指導の必要性
(3)生活指導の基本原理
2 生活指導の管理体制
3 生活指導の目標
4 生活指導活動
(1)生活指導の3段階
(2)特別指導活動
第2節 しつけ教養
1 しつけの概念
2 しつけ教養の必要性
(1)社会生活維持の立場からの必要性
(2)警察職務遂行上の立場からの必要性
(3)職場生活を維持する立場からの必要性
3 しつけ教養の目標
4 しつけ教養の内容
5 しつけ教養の方法
第3節 倫理教養
1 倫理の意義
2 警察官の倫理
(1)職業倫理
(2)公務員の倫理
(3)警察官の倫理
3 警察倫理教養の推進
(1)一般教養科目の研修による方法
(2)倫理教育および徳目主義教育による方法
(3)実務教養による方法
(4)生活指導・情操教育等による方法
(5)規律の振粛点検礼式その他外形的指導の推進
(6)倫理性培養の根底
第4節 余暇指導
1 レクリェーションの意義
2 レクリェーションの必要性
3 若年層の余暇時間活用の特徴
4 職場におけるレクリェーション
(1)レクリェーション指導管理のあり方
(2)レクリェーションの運営
第5節 団体精神・帰属意識・愛警心の育成等組織の協力度の培養
1 団体精神・帰属意識・愛警心
2 団体精神・帰属意識・愛警心の育成指導
3 団体精神・帰属意識・愛警心育成指導における監督者と部下との関係
第6節 監督者教養
1 監督者教養の必要性
2 監督者教養推進の対策
3 監督者教養計画策定の基本
4 教養の方法および評価等
第6章 若年警察官に対する指導教養
第1節 組織における若年警察官の問題
第2節 若年警察官の特徴と傾向
第3節 若年警察官の指導教養管理体制
1 組織制度の確立推進
(1)若年警察官管理組織の設定
(2)複合運営組織及び自治交友組織等の設定
(3)寮及び生活管理体制等の設定
(4)ホームリレーションズ制度の設定
2 若年警察官を指導しうる有能な監督者と職員の育成
(1)教養訓練内容
(2)監督者としての心構え
3 指導教養の推進
(1)若年警察官特別教養による指導教養
(2)生活指導及びしつけ教養
(3)仕事を通しての実務指導教養
4 意思疎通の推進
第4節 若年警察官の寮における生活指導要領
(1)寮管理の重要性
(2)寮の役割
(3)寮における生活指導
(4)寮管理
第5節 若年警察官問題の本質
1 若年警察官問題の側面
2 若年警察官問題の本質
第7章 事故防止
第1節 事故の原因と対策
1 事故の原因
(1)全般的な原因
(2)個人的な原因
2 一般的対策
(1)基本観念の確立
(2)指揮監督の徹底
(3)教養の推進
(4)人事配置の適正
(5)事故の再発防止策の推進
3 監督者としての事故防止手法
4 事故発生時における処置要領
第2節 事故防止の時期的配慮
1 年末年始時における事故防止
2 行楽時期における事故防止
(1)取締り執行務に伴う事故防止
(2)レクリェーション行事に伴う事故防止
1 異動時期における事故防止
第3節 事案別事故防止要領
1 警察官による交通事故防止方策
(1)事故防止意識の高揚と法令の遵守の徹底
(2)警察官による交通事故防止の要領
(3)交通違反取締時の交通事故防止
(4)交通事故現場における事故防止
2 けん銃事故防止
(1)使用取扱い時の事故防止
(2)保管時における事故防止
3 飲酒による事故防止
4 被疑者事故の防止
(1)取調べに伴う事故防止
(2)留置場における事故防止
(3)同行連行および護送時における事故防止
5 火災事故の防止
6 婦人関係にもとづく事故防止
7 勤務に関する事故防止
8 人権侵犯事故防止
9 警察手帳その他給貸与品等の事故防止
10 拾得物、証拠品等の事故防止
11 金銭汚職に関する事故防止
12 秘密ろうえい等の事故防止、および公印による事故防止
13 庁舎などに対する不法侵入の事故防止
14 警備実施時の事故防止
15 武道訓練時の事故防止
第4節 受傷事故防止
1 受傷事故防止の必要性
2 受傷事故の一般的傾向と検討
3 基本的な心構え
(1)監督者としての心構え
(2)警察職員としての心構えの培養
4 受傷事故防止の一般的方策
(1)組織制度の設定および管理上の問題点の検討
(2)指導教養の徹底
(3)指導監督の適正
(4)施設・装備・資器材および給貸与品等の改善活用
5 警察官個人に対する指導監督
(1)交番・駐在所等における勤務に関する指導監督
(2)職務質問に関する指導監督
(3)被疑者逮捕に関する指導監督
(4)めいてい者または精神錯乱者等の保護時に関する指導監督
(5)同行連行および護送に関する指導監督
(6)取調べ留置に関する指導監督
6 けん銃警棒の着装使用要領
(1)警らの場合の、けん銃、警棒、着装使用要領
(2)職務質問時における、警棒、けん銃使用要領
第5節 若年警察官についての事故防止
1 若年警察官の事故傾向
2 若年警察官に対する事故防止指向点
第8章 監督者よかくあれ
戻る お申し込み